OBD2 コード P1476 ダッジ車の意味、原因、診断・修理ガイド

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OBD2 コード P1476 とは? ダッジ車における基本的な意味

OBD2 コード P1476 は、「リーク検出ポンプ制御回路 (Leak Detection Pump Control Circuit)」に関する故障を示す汎用コードです。特に、ダッジ・チャージャー、ダッジ・ラム、クライスラー 300 など、2000年代から2010年代にかけての多くのクライスラーグループ車両で頻繁に発生します。このコードは、車両の蒸発燃料装置(EVAPシステム)の一部である「リーク検出ポンプ(LDP)」の制御回路に、ECM(エンジン制御モジュール)が異常を検出したことを意味します。

EVAPシステムは、燃料タンクから発生する有害な燃料蒸気を大気中に放出させずにキャニスターに吸着・浄化し、適切なタイミングでエンジン内で燃焼させる役割を持ちます。リーク検出ポンプは、このシステム内に微小な真空(負圧)を作り出し、配管や燃料タンクキャップなどに極小の燃料蒸気漏れ(リーク)がないかを定期的に検査するための重要なコンポーネントです。P1476 は、このポンプを動かすための電気的な経路(電源、アース、制御信号線)に問題があることを示唆しており、結果としてEVAPシステムのリーク検査が正常に行えなくなります。

P1476 コードが発生する主な原因と故障箇所

コード P1476 の根本原因は、リーク検出ポンプ(LDP)に関連する電気回路の不具合に集中します。機械的なポンプの故障も考えられますが、まずは配線やコネクターの確認から始めるのが効率的です。

1. 配線およびコネクターの不良

最も一般的な原因です。LDPは車体後部(燃料タンク付近)やエンジンルーム内に設置されていることが多く、振動、熱、水分、塩害(冬期の融雪剤)の影響を受けやすい環境にあります。

  • 断線・ショート: ポンプへの電源線(通常は12V)またはアース線の断線、あるいは他の配線との接触によるショート。
  • コネクターの腐食・緩み: コネクターピンの錆、汚れ、または完全に嵌っていない状態。
  • 配線の絶縁被覆の損傷: 摩擦や噛み跡による被覆の破れが内部導体を露出させ、短絡や断線を引き起こす。

2. リーク検出ポンプ(LDP)自体の故障

ポンプ内部の電気部品(モーター、ソレノイド)が焼損したり、機械的に詰まったりしている場合です。抵抗値の測定や作動テストで判断できます。

  • モーターコイルの断線/焼損: マルチメーターでポンプの端子間抵抗を測定し、仕様値(通常は数Ω~数十Ω)から大きく外れている。
  • 内部バルブの固着/破損: 真空を作り出すための内部バルブが汚れや経年劣化で動かなくなる。
  • ポンプケースのひび割れ: 物理的損傷により真空が保持できない。

3. エンジン制御モジュール(ECM)の不具合

比較的稀ですが、LDPを制御するECM側のドライバー回路が故障している可能性があります。これは、他のすべての可能性を排除した最後に検討すべき原因です。

4. 関連するリレーまたはヒューズの故障

LDPへの電源を供給するリレーやヒューズが溶断している場合があります。配線図を参照し、該当する電源回路を確認する必要があります。

P1476 コードの診断・トラブルシューティング手順

専門的な診断ツール(OBD2スキャナー)とマルチメーターが必要です。安全のため、作業前にバッテリーのマイナス端子を外すことを推奨します。

ステップ1: コードの記録とデータの確認

スキャンツールでP1476コードを記録し、同時に発生している他のコード(特にEVAP関連コードP0440-P0456など)がないか確認します。フリーズフレームデータを確認し、コードが発生した時のエンジン状態(水温、車速、負荷)を記録します。

ステップ2: 目視検査(最も重要)

  • 車両をリフトアップし、燃料タンク周辺や車体下を点検。LDPの位置は車種によって異なるため、サービスマニュアルで確認。
  • LDPへの配線ハーネスとコネクターを注意深く観察。腐食、緩み、損傷、焼け焦げがないかチェック。
  • 配線が鋭利なエッジや高温部(エキゾースト)に接触・接近していないか確認。

ステップ3: LDPの電気的検査

コネクターを外し、マルチメーターを使用します。

  • 電源電圧の確認: コネクター側(ハーネス側)で、キーをON(エンジン停止)にした状態で、電源ピンとアース間の電圧を測定。バッテリー電圧(約12V)に近い値が出るか。
  • LDP抵抗値の測定: LDP本体側の2端子間の抵抗を測定。メーカー仕様値(例: 10Ω~30Ω)と比較。無限大(断線)や0Ωに近い値(ショート)は不良。
  • アース回路の確認: オームメータで、コネクターのアースピンから車体アース間の抵抗を測定。1Ω以下が正常。

ステップ4: アクチュエータテストと作動音の確認

高機能なスキャンツールには「アクチュエータテスト」機能があります。これを使用して、ツールからLDPを作動させ、実際に「カチカチ」という作動音がするか確認します。音がしない場合は、電気的な故障が強く疑われます。

ステップ5: 配線の連続性・短絡テスト

ECMとLDP間の制御信号線の連続性をオームメータで確認します。また、信号線と車体アース間、または他の電源線との間で短絡(導通)がないかもテストします。

修理方法と予防策

原因に応じた適切な修理が必要です。部品交換後は、必ず故障コードを消去し、ドライブサイクルを実施してコードが再発生しないことを確認します。

修理の具体例

  • 配線修理: 損傷部分を切断し、はんだ付けまたは専用コネクターで接続し、防水・防振処理を施す。
  • コネクター交換: 腐食がひどい場合は、コネクターキットを用いてハーネス側、またはポンプ側のコネクター全体を交換。
  • LDP交換: ポンプ自体が故障と判断された場合。純正または同等品質のリプレースメントパーツに交換。Oリングなどのシール部品も同時交換が望ましい。

再発を防ぐための予防策

  • 車体下部の洗浄、特に冬期後は塩分をしっかり落とす。
  • 配線ハーネスがぶら下がったり、接触したりしないよう、クリップで確実に固定する。
  • 定期的な車検・点検時に、EVAPシステム関連の配線に異常がないか目視で確認してもらう。

まとめ: コード P1476 は、ダッジ車においてEVAPシステムの自己診断機能を失わせる電気系故障です。エンジンパフォーマンスに直接影響は与えませんが、環境規制違反となり車検に通らなくなる可能性があります。診断は「目視検査」から系統的に進めることで、多くの場合、原因を特定し、確実な修理を行うことができます。複雑な配線追跡やECMの疑いがある場合は、専門整備工場への相談をお勧めします。

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