BMW P1475 故障コードの診断と解決法:二次空気噴射システム制御回路の完全ガイド

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P1475故障コードとは:BMWの二次空気噴射システムの役割と重要性

OBD2故障コードP1475は、「二次空気噴射システム制御回路」に異常があることを示す、BMW車両に特に関連の深いコードです。このシステムは「セカンダリエアシステム(SAS)」とも呼ばれ、エンジン始動後の冷間時に、排気マニホールドまたは触媒コンバーターの上流に新鮮な空気を強制的に送り込む役割を担います。その主な目的は、未燃焼の炭化水素(HC)と一酸化炭素(CO)を急速に酸化させ、触媒コンバーターの早期活性化を促進し、排出ガスを大幅に低減することにあります。P1475は、このシステムの電気的制御回路(ポンプ、バルブ、配線、リレー、ECUなど)に問題が検出された際に点灯します。システムが作動しないと、特に低温始動時の排出ガスが増加し、環境性能が低下するだけでなく、長期的には触媒コンバーターへの負担が増大する可能性があります。

二次空気噴射システムの基本構成

  • 二次空気ポンプ(エアポンプ): エンジンルーム内に設置され、吸入した空気を加圧してシステムに送り出す電動ポンプ。
  • 二次空気切換弁(制御バルブ): ポンプから送られてきた空気の流れを制御し、排気系へ導くバルブ。電磁式またはバキューム式が一般的。
  • バキュームソレノイドバルブ(バキューム式システムの場合): エンジンの負圧を利用して切換弁を動作させるための制御バルブ。
  • リレーとヒューズ: 大電流を必要とする空気ポンプへの電源供給を制御・保護する。
  • 配線ハーネスとコネクタ: ECUから各コンポーネントへの電気信号と電力を伝達。
  • エンジン制御ユニット(ECU/DME): エンジン水温や回転数などのデータから作動タイミングを判断し、システム全体を制御する頭脳。

P1475が発生する主な原因と症状:BMWドライバーが知るべきサイン

P1475コードが記録されると、同時にエンジンチェックランプ(MIL)が点灯します。このコードは「制御回路」の故障を示すため、機械的な詰まりよりも、電気的・電子的な不具合が原因であるケースが大半です。ドライバーが直接感じられる自覚症状は限られる場合もありますが、熟練のメカニックや愛好家は、特定の条件下でのエンジン音や挙動の変化に気付くことがあります。

P1475コードの一般的な原因

  • 二次空気ポンプの故障: モーターの焼損、ブラシの磨耗、ベアリングの損傷により作動しない。
  • 二次空気切換弁の故障: 電磁コイルの断線、バルブの固着(カーボンや湿気による)、ダイアフラムの破損。
  • バキュームシステムのリークまたは故障(該当モデル): ホースの亀裂・外れ、ソレノイドバルブの不良。
  • 電気系統の問題: ポンプまたはバルブへの配線の断線・ショート、コネクタの腐食・緩み。
  • 電源供給の不良: 二次空気ポンプ用リレーの故障、ヒューズの断線。
  • ECU(DME)の制御不良: 極めて稀ですが、ECU内部のドライバー回路の故障。

発生しうる症状

  • エンジンチェックランプの点灯(必須)。
  • エンジン始動直後(冷間時)に、ポンプの作動音がしない、または異音(「カラカラ」「キーキー」音)がする。
  • 排出ガス検査時の数値(特にHC、CO)が高くなる可能性。
  • 他の関連コード(例: P0410, P0411, P0418など)が同時に記録される場合がある。
  • 車両によっては、アイドリングがやや不安定になることがある。

専門家による診断と修理手順:P1475コードへの体系的アプローチ

P1475は回路の故障を示すため、系統的な電気診断が解決への近道です。部品交換を安易に行う前に、以下の手順で根本原因を特定することが、時間とコストの節約、そして再発防止につながります。

ステップ1: 初期確認とビジュアルインスペクション

まず、BMW専用の診断スキャンツール(INPA, ISTA/D)または高機能な汎用OBD2スキャナーを用いて、P1475コードを確認し、フリーズフレームデータ(故障発生時のエンジン水温、負荷など)を記録します。次に、エンジンルームの視認検査を行います。

  • 二次空気ポンプ(通常はフロントバンパー内側やエンジン側面)とバルブ周りの配線・コネクタに、明らかな損傷、焼け、腐食がないか確認。
  • バキュームホース(あれば)の接続状態と、亀裂・硬化がないか点検。
  • 関連するヒューズ(ボックス内の表示を参照)とリレーを目視およびテスターで確認。

ステップ2: アクティベーションテストとコンポーネントチェック

診断スキャナーの「アクティベーションテスト」機能を用いて、二次空気ポンプと切換弁を強制作動させます。

  • ポンプのテスト: 作動指令を出した時に、ポンプから明確な作動音と振動が感じられるか。感じられない場合は、ポンプへの電圧供給をテスターで測定(通常はバッテリー電圧に近い12V)。電圧があればポンプ故障、電圧がなければ電源回路(リレー、配線、ECU)の故障を疑う。
  • 切換弁のテスト: 作動指令時に「カチッ」というクリック音がするか(電磁式の場合)。音がしない場合は、弁自体のコイル抵抗をマニュアルに基づいて測定(通常は数Ω~数十Ω)。無限大または極端に高い場合はコイル断線。また、バキューム式の場合は、作動時にバルブに負圧がかかっているか確認。

ステップ3: 回路の電気的診断

コンポーネント単体が正常でも、ECUからの制御信号が届かない場合があります。ECUのコネクタを外し(バッテリー切断後)、ECUとコンポーネント間の配線の導通テストと短絡・接地テストを行います。配線図に基づき、信号線の抵抗値(低いこと)と、電源線とアース線がボディなどにショートしていないことを確認します。

修理と予防策

原因を特定したら、故障部品を交換します。ポンプやバルブは純正またはOEM品の交換が信頼性の面で推奨されます。修理後は、故障コードを消去し、エンジンを冷ましてから再始動し、システムが正常に作動するか(ポンプ音がするか)確認します。予防としては、エンジンルームの定期的な清掃と点検(特に冬季の塩害後や高湿度環境)、コネクタの接触不良防止剤の使用が有効です。また、頻繁な極短距離移動のみを繰り返すと、システム内に凝縮水が溜まりバルブが固着する原因となるため、時々エンジンを十分に温めて走行することが長寿命の秘訣です。

まとめ:P1475は早期の系統的診断が鍵

BMWのP1475故障コードは、二次空気噴射システムという重要な排ガス浄化装置の電気的制御に問題があることを警告しています。放置しても直ちに走行不能になることは稀ですが、環境性能の低下と、将来的な触媒コンバーターへの悪影響を考慮すれば、早期の対応が望ましいです。原因はポンプ、バルブ、リレー、配線と多岐に渡りますが、診断スキャナーと基本的な電気テスターを用いた系統的なアプローチにより、多くの場合でDIYでも原因を特定し、適切な修理を行うことが可能です。特に古いBMWモデルでは、配線の経年劣化やコネクタの腐食が原因となるケースが多いため、部品交換前に電気回路の徹底確認を行うことが、無駄な出費を防ぎ、愛車の長期的な健康を保つ最善の方法です。

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