故障コード P1474 とは？ アウディ車における基本的な意味
OBD2（On-Board Diagnostics II）故障コード P1474 は、一般的に「リーク診断ポンプ制御回路/信号不良」または「二次空気噴射システムリーク診断ポンプ回路」と定義されます。アウディをはじめとするVWグループ（フォルクスワーゲン、ポルシェ等）の車両で頻繁に発生するコードの一つです。
このコードが点灯する根本的な理由は、車載コンピューター（ECU：エンジン制御ユニット）が、リーク診断ポンプ（Leak Detection Pump: LDP） または 二次空気噴射（Secondary Air Injection: SAI）システム に組み込まれたポンプの電気回路に異常を検出したことを意味します。このシステムは、燃料タンクから発生する燃料蒸発ガス（エバポレーティブ・エミッション）が大気中に漏れていないかを監視する、排出ガス規制に基づく重要な役割を担っています。
リーク診断ポンプ（LDP）の役割と重要性
リーク診断ポンプは、エバポレーション（EVAP）システムの一部として機能します。その主な役割は以下の通りです。
- システムの気密性検査: ECUの指示によりポンプを作動させ、燃料タンクからチャコールキャニスター（活性炭罐）にかけての配管系に微小な圧力（真空または正圧）を発生させます。
- 圧力変化の監視: 設定された圧力を維持できるか、または圧力が低下する速度をセンサーで監視します。
- リークの検出: 圧力が規定値より早く低下する場合、ガソリン蒸気の漏れ（リーク）があると判断し、ECUに信号を送ります。これが大きいとP0440などの別のコードを発生させますが、ポンプ自体の故障はP1474となります。
つまり、P1474は「リークを検査する装置自体に問題がある」という状態を示しており、放置するとEVAPシステム全体の診断が不能となり、車検（定期点検）に不合格となる可能性が高まります。
アウディ P1474 コードの主な原因と特定方法
P1474が記録される直接的な原因は、リーク診断ポンプに関連する電気的・機械的な問題に集中しています。以下に、発生頻度の高い順に原因を解説します。
原因1: リーク診断ポンプ（LDP）自体の故障
最も一般的な原因です。ポンプ内部の電動モーターが焼損したり、内部のバルブやダイアフラムが経年劣化で詰まったり破損したりすることで、正常に作動しなくなります。ポンプは通常、エンジンルーム内のフェンダー付近やバッテリー付近に設置されています。
- 診断ポイント: ポンプに通電して作動音がするか確認します。また、オームメーターでモーターの抵抗値を測定し、メーカー指定値（通常は数Ω～数十Ω）から大きく外れていないかチェックします。無限大（開放）や0Ω（短絡）は故障です。
原因2: 配線ハーネスやコネクターの不良
ポンプからECUまでの配線が、振動や熱、齧歯類（ネズミ）などによって断線、接触不良、短絡を起こしているケースです。アウディ車はコンパートメント内の配線が複雑なため、特に注意が必要です。
- 診断ポイント:
- コネクターの腐食、錆、ピンのゆるみがないか目視検査。
- 配線を手で動かしながら、診断機のデータストリームでポンプの状態が変わるか確認（ウィグgleテスト）。
- 配線図に基づき、電源線（バッテリー電圧）、アース線（0Ω抵抗）、ECUへの信号線の導通と短絡をチェック。
原因3: ヒューズの断線
リーク診断ポンプ用の電源ヒューズが切れている単純なケースもあります。ECUボックス内または室内ヒューズボックスを確認します。
原因4: エンジン制御ユニット（ECU）の不具合
他の原因を全て排除しても問題が解決しない、極めて稀なケースです。ECU内部の駆動回路の故障が考えられます。専門店での詳細な診断が必要です。
専門家によるステップバイステップ診断・修理手順
ここからは、実際にP1474コードが点灯したアウディ車を診断・修理するための具体的な手順を説明します。作業には、OBD2診断機（スキャンツール）とマルチメーター（テスター）が必要です。
ステップ1: コードの確認とデータの記録
まず、信頼性の高いOBD2診断機で、P1474が「現在の故障」として記録されているか、「過去の故障」なのかを確認します。他の関連コード（P0440, P0455など）が同時に記録されていないかも確認します。コードを消去し、エンジンをかけて短距離走行後、再スキャンしてコードが再現するか確認します。
ステップ2: リーク診断ポンプの物理的・動作確認
エンジンを止めた状態で、リーク診断ポンプのコネクターを外し、以下のチェックを行います。
- 抵抗値測定: マルチメーターを抵抗測定モードにし、ポンプの2ピン（車種により異なる）間の抵抗を測ります。規定値は車種により異なりますが、10Ω前後であることが多いです。0Ωや無限大は故障を示唆します。
- 直接通電テスト（注意）: ポンプの端子にバッテリー電圧（12V）を直接、一時的に加え（極性に注意）、「カチカチ」または「ブーン」という作動音がするか確認します。音がしない、または異音がする場合はポンプ故障の可能性が極めて高いです。
ステップ3: 配線と電源の系統チェック
ポンプのコネクターを車両側に接続した状態で、バックプローブ（ピンに刺す細いピン）を用いて電圧を測定します。
- 電源線チェック: イグニッションSWをON（エンジンは停止）にし、コネクターの電源ピンでバッテリー電圧（約12V）が確認できるか。
- アース線チェック: マルチメーターを抵抗測定モードにし、一方の端子をコネクターのアースピン、もう一方を車体の金属部分（良いアース）に当て、抵抗が0.5Ω以下であることを確認します。
ステップ4: 部品交換とコード消去
上記の診断でリーク診断ポンプの故障が確定したら、純正またはOEM同等品との交換を行います。交換後、診断機で全ての故障コードを消去し、エンジンを始動してエンジンチェックランプが消灯することを確認します。その後、数日間の通常走行を行い、コードが再発しないか確認することが理想的です。
予防策とメンテナンスアドバイス
P1474を予防する直接的な方法はありませんが、以下の点に注意することで関連トラブルを減らせます。
- 燃料タンクの満タン禁止の習慣化: 特に夏場、燃料を目いっぱい入れすぎると、蒸発ガスが過剰に発生しシステムに負担をかけます。
- エンジンルームの清潔さの維持: ポンプや配線周辺に土埃や枯葉が堆積しないようにし、ネズミなどの侵入を防ぎます。
- 定期的な診断機によるチェック: エンジンチェックランプが点灯していなくても、定期的に隠れコード（過去の故障）がないかスキャンする習慣をつけると、早期発見に役立ちます。
アウディのP1474故障コードは、車検に関わる重要な排出ガスシステムの一部です。早期に正確な診断と修理を行うことで、より重大なトラブルや車検不合格を防ぐことができます。自信がない場合は、VW/Audi専門の整備工場への相談をお勧めします。