米国市場で短命に終わったIDバズの挑戦
フォルクスワーゲンの電動ミニバン「IDバズ」が、米国市場での販売開始からわずか1年モデルのみで終了することが明らかになりました。同社は2026年モデルの提供をキャンセルし、事実上の市場撤退を決断しました。この決定は、昨年10月に需要の低迷を理由に生産を一時停止すると発表した流れを受けたものです。
需要の急激な冷却が引き金に
複数の海外自動車メディアによると、IDバズに対する米国市場の需要は予想以上に急速に冷え込んだと報告されています。当初はノスタルジックなデザインと電気自動車としての実用性が注目を集めていましたが、実際の販売面では苦戦が続いていました。市場では、価格設定の高さや競合他社の電動SUVの人気、充電インフラへの懸念などが購買意欲を削いだ要因として指摘されています。
生産調整から販売終了への流れ
フォルクスワーゲンは需要の減退を受けて、既にドイツ・ハノーファー工場でのIDバズの生産を調整していました。今回の米国市場における販売終了は、この生産調整をさらに推し進める形となりました。現在、同社は在庫車両の販売に注力しており、新たな2026年モデルの生産・輸入は行われない見通しです。
電気自動車戦略への影響と将来性
IDバズの米国撤退は、フォルクスワーゲン全体の電気自動車戦略にも影響を及ぼす可能性があります。同車はT1バスのデザインを現代風にアレンジした象徴的なモデルとして位置づけられており、その早期撤退はブランドイメージにも少なからぬ影響を与えそうです。今後の焦点は、より売れ行きの良いID.4などのSUVモデルや、今後の新型電気自動車に移行していくものと見られます。
一方、欧州市場ではIDバズの販売が継続される見込みですが、グローバルな電気自動車市場の競争激化と需要の変化の中で、その長期的な将来性には不透明感が残っています。自動車業界全体が電気自動車への移行期にある中、メーカー各社のモデル戦略は今後も流動的になると予想されます。