トランプ政権、自動車排出ガス規制の枠組みを撤廃
米国環境保護庁(EPA)は、温室効果ガスが公衆の健康に対する脅威であるとする2016年の公式見解「エンダージャメント・ファインディング」を正式に撤回しました。この決定は、オバマ政権時代に制定された自動車排出ガス規制の法的根拠を根本から覆すもので、米国の環境・自動車産業政策における歴史的な転換点となっています。
規制緩和の背景と即時影響
今回の規制枠組み撤廃は、主に二つの分野に直接的な影響を与えます。第一に、自動車メーカーに対する燃費基準の強制力が大幅に緩和され、各州が独自に設定する排ガス規制の連邦法に対する優位性が削減されます。第二に、発電所や産業施設に対する温室効果ガス規制の法的基盤が弱体化し、今後の環境規制の方向性に不確実性をもたらしています。
産業界と環境団体の反応
自動車業界からは、規制緩和により技術開発の柔軟性が増すとの評価がある一方、カリフォルニア州をはじめとする複数の州は連邦政府を提訴する構えを見せています。環境保護団体は、この決定が気候変動対策の後退を招き、長期的な公衆衛生リスクを増大させると強く批判しています。国際的にも、パリ協定からの離脱を表明している米国のさらなる環境政策後退として注目を集めています。
今後の政策動向と課題
今回の決定は、規制の「リセット」を意図したものですが、法的な争いが長期化することが確実視されています。特に、カリフォルニア州の独自基準を認める「免除権」をめぐる争点は、連邦政府と州政府の権限関係にも影響する重要な法廷闘争となる見込みです。また、自動車メーカーは、州ごとに異なる規制が残存する可能性がある中で、製品開発と市場戦略の再調整を迫られることになります。
この政策転換は、環境保護と経済成長のバランス、連邦と州の権限分担、そして国際的な気候変動対策における米国の役割という、三重の課題を浮き彫りにしています。今後の裁判所の判断次第では、政策が再び逆転する可能性も残されており、米国の環境規制は過渡期的な不確実性の時代に入ったと言えるでしょう。