OBD2 コード P1477 クライスラー:意味、原因、診断、修理ガイド

投稿者:

OBD2 コード P1477 とは? クライスラー車における技術的定義

OBD2 コード P1477 は、クライスラー、ダッジ、ジープなどの車両において、「バッテリー温度センサー回路高電圧 (Battery Temperature Sensor Circuit High Voltage)」として定義される汎用故障コードです。このコードは、車両の電源管理システムの一部であるバッテリー温度センサー (BTS) の回路で、エンジン制御モジュール (PCM) が予期しない高電圧を検出したことを示します。

バッテリー温度センサーは、通常、バッテリートレイ内またはその近くに取り付けられており、バッテリーの温度を監視します。PCMはこの温度データを利用して、オルタネーターの出力電圧を最適化し、過充電や充電不足を防ぎ、バッテリーの寿命を延ばします。また、一部の車両では、電磁クラッチ式の冷却ファンの作動タイミングを制御するためにも使用されます。

P1477 が点灯するメカニズムと PCM の判断基準

PCMはバッテリー温度センサーに対して基準電圧 (通常5V) を供給し、センサー内部の抵抗値の変化によって戻ってくる信号電圧を監視します。温度が低いと抵抗値が高くなり信号電圧は高く、温度が高いと抵抗値が低くなり信号電圧は低くなります。

  • 正常状態: 信号電圧は周囲温度に応じて0.5Vから4.5Vの間で変動します。
  • P1477 検出条件: PCMがセンサー回路で「高電圧」状態、すなわち信号電圧が規定の上限値 (例: 4.6V以上) を一定時間超え続けた場合にコードが記録され、チェックエンジンランプが点灯します。これは、回路が「オープン」または「ショート」状態にあることを示唆します。

クライスラー車における P1477 コードの主な原因と影響

P1477 コードの根本原因は、バッテリー温度センサー回路における電気的な異常です。以下に、発生頻度の高い原因を列挙します。

1. センサー関連の不具合

  • 不良なバッテリー温度センサー: センサー自体の内部故障が最も一般的な原因です。内部で断線やショートが発生すると、正しい信号をPCMに送れなくなります。
  • センサーの接続不良: コネクターの腐食、ピンのゆるみ、汚れによる接触不良。

2. 配線・ハーネスの問題

  • 配線の断線またはショート: センサーからPCMまでの配線が物理的に切れている、または車体(グランド)や電源線に触れてショートしている。
  • 配線の被覆損傷: 摩擦や熱、齧歯類による損傷で絶縁体が破れ、間欠的なショートを引き起こす。

3. PCM(エンジン制御モジュール)の故障

比較的稀ですが、PCM内部のセンサー電源回路や信号処理回路に問題がある場合、誤ったコードが設定される可能性があります。これは、他の全ての原因を排除した後に検討すべきです。

コード P1477 が及ぼす車両への影響

  • バッテリー充電制御の非最適化: PCMが正確なバッテリー温度を把握できないため、過充電(バッテリーの早期劣化、液減り)や充電不足(始動不良)のリスクが高まります。
  • 冷却ファンの作動異常: このセンサー信号を冷却ファン制御に使用する車種では、ファンが常時作動したり、逆に全く作動しなくなったりする可能性があり、オーバーヒートの原因となります。
  • 他のコードの併発: 充電システムに関連するコード(P0562/P0563 システム電圧異常など)が同時に記録される場合があります。

P1477 コードの効果的な診断手順:ステップバイステップガイド

安全のため、診断作業前にエンジンを停止し、キーを抜いてください。必要な工具は、デジタルマルチメーター (DMM) と配線図です。

ステップ1: ビジュアルインスペクション

  • バッテリー温度センサーとそのコネクターを探し、明らかな損傷、腐食、緩み、汚れがないか確認します。
  • センサーからPCMまでの配線ハーネス全体を目視でチェックし、切断、擦れ、焼け焦げがないか調べます。

ステップ2: センサー抵抗値の測定

センサーをコネクターから外し、DMMを抵抗測定モード(Ω)に設定します。センサーの端子間の抵抗を測定し、車種ごとの仕様値(多くの場合、20°Cで約10kΩ前後)と比較します。温度変化に対する抵抗値の変化も確認します(手で温めるなど)。

  • 抵抗値が無限大(OL): センサー内部で断線。交換が必要。
  • 抵抗値が0Ωに近い、または極端に低い: センサー内部でショート。交換が必要。

ステップ3: 回路の電圧チェック

センサーコネクターを再接続し、バックプローブ用リードやTピンを使用して、エンジンキーを「ON」(エンジンは停止)の状態で信号線の電圧を測定します。

  • 電圧が5V前後で固定されている、または4.6V以上: センサーが回路に影響を与えていない(オープン状態)か、信号線が他の5V電源にショートしている可能性が高い。次のステップへ。
  • 電圧が正常範囲内で変動: 断線的な問題かPCMの可能性。配線の連続性チェックへ。

ステップ4: 配線の連続性とショートチェック

  • 連続性チェック: DMMを導通モードにし、センサーコネクターの信号端子からPCM側の対応する端子まで、配線が切れていないか確認します。
  • グランド/電源ショートチェック: DMMを抵抗測定モードにし、信号線と車体アース(グランド)、およびバッテリープラス線との間の抵抗を測ります。どちらに対しても極めて低い抵抗値(数Ω以下)が示された場合、その部分でショートが発生しています。

ステップ5: PCM への信号確認と最終判断

配線に問題がなければ、スキャンツールのデータストリーム機能で「バッテリー温度」の読み値を確認します。異常に低い温度(例:-40°C)を示す場合は、回路がオープンであることを示す典型的な症状です。ここまでの検査で異常が見つからなければ、PCMの不良が疑われます。

P1477 コードの修理方法と予防策

原因に応じた適切な修理を行います。

修理作業の具体例

  • バッテリー温度センサーの交換: センサー不良が確定した場合。純正または同等品のセンサーに交換し、コネクターを確実に接続します。
  • 配線の修理: 断線やショート部分を見つけたら、その部分を切断し、はんだ付けまたは専用のコネクターで適切に接続し、防水・絶縁処理を施します。テープ巻きだけの修理は避けましょう。
  • コネクターの修理: 腐食やピン歪みがある場合は、コネクタークリーナーで清掃するか、必要に応じてコネクターアセンブリ全体を交換します。

修理完了後の作業

修理後、スキャンツールで故障コードを消去し、テスト走行を行います。データストリームでバッテリー温度が実際の環境温度に応じて適切に変化していることを確認し、コードが再発しないことを確かめます。

問題の予防策

  • バッテリー周辺の定期的な清掃と点検を行い、腐食や汚れを防ぎます。
  • バッテリー交換時や周辺作業時には、センサーや配線を傷つけないよう注意します。
  • 車両下部の配線ハーネスが緩んでいないか、定期的に確認します。

OBD2コードP1477は、直接エンジンの走行性能に影響を与えないため軽視されがちですが、バッテリーと充電システムの長寿命化、そして関連システムの正常作動のために、早期の診断と修理を行うことが重要です。基本的な電気系統の知識と系統的な診断手順に従えば、多くの場合、自身で問題を特定し解決することが可能です。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です