MINI OBD2 故障コード P1468 の原因と診断・修理ガイド

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故障コードP1468とは? MINI車のエアコン制御システムの警告

OBD2故障コードP1468は、「エアコン(A/C)圧力センサー回路 高電圧 (A/C Pressure Sensor Circuit High Voltage)」を意味する、MINIを含む多くのBMWグループ車両に共通するコードです。このコードが記録されると、エンジン制御ユニット(ECUまたはDME)が、エアコンシステムの冷媒圧力を監視するセンサーからの信号電圧が、規定された許容範囲を超えて高い状態を検出したことを示します。結果として、エンジン警告灯(MIL)が点灯し、多くの場合、エアコンシステムの作動が保護モードに入り、コンプレッサーが作動しなくなることで、冷房が効かなくなる症状が現れます。

P1468が示すシステム:エアコン圧力センサーの役割

エアコン圧力センサーは、エアコンシステム内の高圧側(コンデンサー出口からエキスパンションバルブ手前)の冷媒圧力を常時監視する重要なコンポーネントです。このセンサーは通常、3本線(5V電源、アース、信号線)で構成され、圧力に比例した電圧信号(通常0.5V~4.5V程度)をECUに送信します。ECUはこの信号をもとに、

  • 冷媒圧力が高すぎる(過負荷)または低すぎる(冷媒不足)状態を検出し、コンプレッサーのクラッチリレーをOFFにしてシステムを保護する。
  • 冷却ファン(ラジエーターファン)の回転数を制御し、コンデンサーの放熱効率を最適化する。
  • アイドリング回転数を微調整し、コンプレッサー作動時のエンジン負荷に対応する。

といった制御を行っています。コードP1468は、このセンサー回路の信号電圧が異常に高い(例:4.8V以上が持続する)状態を指しています。

故障コードP1468の主な原因と症状

P1468の根本原因は、圧力センサー自体の故障から配線の問題まで多岐に渡ります。症状はほぼ確実にエアコンシステムに関連して現れます。

発生する具体的な症状

  • エンジン警告灯(MIL)の点灯:最も一般的な一次症状です。
  • エアコン(A/C)が全く効かない:コンプレッサーが作動せず、吹き出し口から常温の風しか出てきません。
  • ファンが常時高速回転する:ECUが圧力異常を検知し、過剰な冷却を試みるため、ラジエーターファンが最大回転で回り続けることがあります。
  • アイドリングの不調:エアコン作動時の負荷補正が行われず、アイドリングが不安定になる場合があります。

考えられる故障原因トップ5

  1. エアコン圧力センサー自体の故障:内部の半導体素子や回路の不良により、正しい信号を出力できなくなった状態。最も多い原因の一つです。
  2. センサーへの配線(ハーネス)の短絡:センサーの信号線が、電源線(5Vまたは12V)に接触するなどして短絡し、異常高電圧がECUに送られてしまう。
  3. ECU(DME)の供給電圧異常:ECUがセンサーに供給する5V参照電圧が何らかの理由で高くなっている(稀なケース)。
  4. コネクターの接触不良または腐食:センサーやECU側のコネクターで、ピンの歪み、錆、水分侵入による導通不良が、異常電圧として検出される。
  5. 冷媒システムの物理的異常(二次的原因):極端に高圧力がかかる状態(例:コンデンサーの目詰まり、冷却ファン故障による放熱不足)が実際に発生し、センサーが正しく高い電圧を出力している可能性もあります。

MINI P1468 コードの診断と修理手順

専門的なOBD2スキャンツール(例:Autel, Launch, iCarsoft CR/PRO for BMW)があれば、より詳細な診断が可能です。以下に、系統的な診断フローを示します。

準備と初期確認

まず、OBD2スキャンツールでコードP1468を確認・記録した後、コードを消去します。エンジンをかけ、エアコンをMAX冷房に設定し、コードが再現するか観察します。同時に、エアコンのコンプレッサー(クラッチ部)が実際に作動しているか、冷媒配管(特に高圧側)が異常に熱くないか、を目視・触診で確認します。

ステップバイステップ診断チェックリスト

  • ステップ1:センサー抵抗値の計測:エンジンOFF、バッテリー端子外し。圧力センサーのコネクターを外し、センサー側の端子間抵抗をオームメーターで計測します。仕様値は車種により異なりますが、オープン(無限大)やショート(0Ωに近い)であればセンサー不良確定です。
  • ステップ2:配線とコネクターの検査:センサーコネクターからECUまでの配線を目視で確認。断線、絶縁被覆の損傷、ピンの曲がりや腐食がないか仔細にチェックします。コネクターを再装着し、緩みがないか確認。
  • ステップ3:電圧の計測(キーON、エンジンOFF):センサーコネクターを接続した状態で、背面刺しなどで各端子の電圧を計測。
    • アース端子:車体アースに対して0V(導通確認)。
    • 電源端子(5V参照電圧):約5.0Vであることを確認。
    • 信号端子:エンジン始動前・エアコンOFF時の中立電圧(例:1.0-1.5V)を確認。これが4.5V以上であれば、配線の短絡またはセンサー不良が強く疑われます。
  • ステップ4:ライブデータの読み取り:スキャンツールで「エアコン圧力センサー」または「A/C Pressure」のライブデータを表示。エンジン始動後、エアコンONにした時の圧力値(kPaまたはpsi単位)の変化を見ます。表示値が異常に高い(例:常に最大値)または「-」や「0」の場合は、センサーまたは配線の故障を示唆します。実際の圧力ゲージをシステムに接続し、実測値とライブデータ値を比較すれば、センサー精度も検証できます。

修理と部品交換のポイント

診断の結果、エアコン圧力センサーの故障が確定した場合の交換作業は比較的簡単です。センサーは通常、エアコンパイプの高圧側(レシーバードライヤーやコンデンサー近く)にねじ込み式で取り付けられています。重要な注意点は、冷媒を完全に回収・回収機で適正処理した後でないと、センサーを外すことは絶対にできないということです。冷媒システムが開放されると、大気中の水分が侵入し、システム全体の故障を招きます。この作業は、冷媒回収・充填機と資格を持つ自動車整備工場で行う必要があります。センサー交換後は、真空引きを行い、規定量の冷媒と冷凍機油を充填します。

配線の修理が必要な場合は、信頼性の高い防水性のスプライスキットを使用し、十分な絶縁処理を行ってください。作業後は、スキャンツールでコードを消去し、エアコンシステムが正常に作動するか、コードが再発しないかを十分にテスト走行で確認しましょう。

まとめ:早期対応でシステム保護を

故障コードP1468は、MINIのエアコンシステムにおける重要な保護機能が作動した結果です。無視して運転を続けると、コンプレッサーの焼き付きなど、より高額な修理に発展するリスクがあります。診断の初期段階である配線とコネクターの検査はDIYでも可能ですが、冷媒系統に関わる作業は専門工場への依頼が必須です。正確な診断と適切な修理により、快適な空調性能と車両の信頼性を回復させることができます。

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