アウディOBD2コードP1468:二次空気噴射システムの診断と修理ガイド

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OBD2コードP1468とは? アウディ車における二次空気噴射システムの役割

OBD2診断コードP1468は、「二次空気噴射システム、バンク1」に関連する故障を指す汎用コードです。特にアウディ車(VWグループ車両全般)において頻繁に発生し、エンジン制御ユニット(ECU)が二次空気噴射システム(Sekundärluftsystem)の作動に異常を検出したことを意味します。このシステムは、主に冷間始動直後の数分間のみ作動し、排気マニホールドまたは触媒コンバーターに新鮮な空気(二次空気)を送り込むことで、未燃焼の炭化水素(HC)と一酸化炭素(CO)を急速に酸化・燃焼させ、触媒の早期活性化と排出ガス低減を図る重要な排ガス浄化装置です。

二次空気噴射システムの主要構成部品

コードP1468の原因を理解するためには、システムの構成を知ることが不可欠です。主な部品は以下の通りです。

  • 二次空気ポンプ:システムの心臓部。電気モーターで駆動され、燃焼用以外の「二次」の空気を供給します。
  • 二次空気ソレノイドバルブ(組合せバルブ):ECUの指令により、エンジン真空をオン/オフし、チェンジオーバーバルブを制御します。
  • チェンジオーバーバルブ(または二次空気注入バルブ):真空で作動し、二次空気の流路を開閉します。
  • チェックバルブ:排気ガスや水分が二次空気ポンプやホースに逆流するのを防ぎます。
  • エアフィルター:ポンプが吸い込む空気を濾過します。
  • 真空ホース/エアホース:各部品を接続するゴムホース。

アウディP1468コードの主な症状と原因

コードP1468が設定されると、エンジン警告灯(MIL)が点灯します。システムの故障そのものでエンジンの基本的な走行性能(出力、燃費)に直接的な影響を与えることは稀ですが、排ガス規制に適合できなくなり、車検(日本における定期点検)に通過できない重大な問題となります。

よくある故障症状

  • エンジン警告灯の点灯(最も一般的な症状)
  • 冷間始動時、エンジンルームから「ブーン」というポンプ作動音がしない(正常時は数十秒~数分間作動)
  • OBD2スキャンツールでの読み取り時に、コードP1468または関連コード(P0411など)が保存されている
  • 排ガス検査での数値悪化(特にHC、CO値)

コードP1468の根本原因:バンク1の特定と部品故障

「バンク1」とは、シリンダー番号1が含まれるエンジンバンクを指します。V型エンジンのアウディ車では、どちら側のバンクのシステムが故障しているかを特定する重要な手がかりです。根本原因は多岐に渡ります。

  • 二次空気ポンプの故障:モーターの焼損、ブラシの磨耗、内部の腐食による回転不良。水分侵入(車高の低いポンプ位置)が原因となることが多い。
  • ソレノイドバルブの故障:コイルの断線、内部の詰まり、真空ポートの劣化。真空が漏れたり、バルブが開かなかったりします。
  • 真空ラインの劣化・亀裂:エンジン熱によりゴムホースが脆くなり、真空漏れを発生させます。チェンジオーバーバルブが作動しなくなります。
  • チェックバルブの故障:内部のダイヤフラムの破損やバネの劣化により、逆流防止機能を失う、または空気の流れを塞いでしまいます。排気ガスによる高温・腐食の影響を受けやすい。
  • エアホースの破損・外れ:ポンプからチェックバルブへのホースが外れている、または穴が開いている。
  • 配線・電気的問題:ポンプやソレノイドバルブへの電源供給(リレー、ヒューズ)、グランド不良、ECUとの通信線の断線。

プロセスに沿った診断手順:P1468のトラブルシューティング

部品交換を闇雲に行う前に、系統的な診断を行うことで、正確な原因を特定し、無駄なコストを削減できます。以下に専門的な診断フローを示します。

ステップ1:基本検査と可視確認

まずは物理的な異常を目視で確認します。エンジンが冷えている状態で行いましょう。

  • 二次空気ポンプ周辺のすべてのエアホースと真空ホースを点検。外れ、亀裂、硬化、溶けがないか確認。
  • ポンプのエアインテークフィルター(装着車種)が目詰まりしていないか確認。
  • ポンプ本体やバルブにひび割れや損傷がないか確認。
  • 関連する電気コネクターが確実に接続されているか確認。

ステップ2:アクティブテストと作動音確認

高機能なOBD2スキャンツール(VCDS/VAG-COMなどが理想)を使用し、ECUの「アクティブテスト」機能で二次空気ポンプを強制作動させます。

  • テスト中、ポンプから明確な作動音(ブーンという音)と振動が感じられるか?
  • 音がしない、または異音(きしみ音、弱い音)がする場合は、ポンプ自体の故障または電源供給不良が疑われます。
  • ポンプが作動しても、チェックバルブ出口側のホースから強い空気の流れが感じられない場合、ホース詰まりやチェックバルブ故障の可能性があります。

ステップ3:真空システムとバルブの検査

ポンプが正常に作動する場合、次に真空経路を検査します。

  • エンジン始動後、ソレノイドバルブへの真空ホースを外し、確実に真空がかかっているかを指で感じて確認。
  • 真空ポンプや手動真空ツールを使用し、チェンジオーバーバルブのダイヤフラムが真空を保持するか、作動するかを直接テストします。
  • ソレノイドバルブに12V電圧を直接加え(バッテリーなどから)、「カチッ」と作動音がするか、そして空気の流れが変わるかを確認します。

ステップ4:電気系統の詳細診断

ポンプが一切作動しない場合、電気系統の診断が必要です。

  • 二次空気ポンプのヒューズとリレーを確認、交換してテスト。
  • マルチメーターを使用し、ポンプコネクターでエンジン始動直後に12V電圧が供給されているか測定。
  • ポンプ自体の抵抗値を測定(通常は数Ω~十数Ω)。無限大(断線)や0Ω(短絡)の場合は故障確定。
  • ソレノイドバルブのコイル抵抗も同様に測定します。

修理・交換の実際と予防メンテナンス

原因部品が特定できたら、修理または交換を行います。アウディ車では、ポンプ、ソレノイドバルブ、チェックバルブが一体型の「組合せ部品」として提供されているモデルも多いため、パーツカタログで確認が必要です。

修理時の重要なポイント

  • 純正部品または高品質なOEM互換品の使用:安価な非純正品は耐久性に問題があり、すぐに再故障するリスクが高い。
  • ホース類の総交換:真空・エアホースは一度劣化が始まっているため、原因部品交換時にまとめて新品に交換するのがベストプラクティス。クランプも締め直す。
  • チェックバルブの向き:取り付け方向には矢印(空気の流れる方向)が刻印されているので、必ず確認して取り付ける。
  • 故障コードの消去と完了確認:修理後、スキャンツールで故障コードを消去し、エンジンを冷ましてから数回の冷間始動サイクルを経て、コードが再発しないことを確認します。

P1468を未然に防ぐ予防策

このシステムの故障は、ある程度予防可能です。

  • 短距離移動の頻回な繰り返しを避ける:システムが十分に作動・乾燥する機会が減り、内部結露による腐食を促進します。定期的にエンジンを十分温める運転を心がけましょう。
  • エアフィルターの定期的な確認:装着車種では、フィルターの目詰まりがポンプの負荷を増大させます。
  • 車両下部の洗浄後:高圧洗車で直接ポンプに水をかけないように注意。可能であればポンプの取り付け位置を確認しておく。
  • 定期的なOBD2スキャン:警告灯が点灯する前の「保留コード」を早期に発見できることがあります。

まとめると、アウディのOBD2コードP1468は、二次空気噴射システムの機械的・電気的故障に起因します。系統的な診断手順に従うことで、的確な修理部品を特定し、排ガス性能を回復させることが可能です。複雑な電気配線の診断に不安がある場合は、専門整備工場への相談をお勧めします。

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