電気自動車への走行課税、世界的な潮流に
英国に続き、米国カリフォルニア州も電気自動車(EV)に対する走行距離課税(キロメートル税)の本格導入を検討しています。脱炭素化の先駆けとして普及を後押しされてきたEVが、新たな課税対象となるこの動きは、自動車税制の大転換点を告げるものとして、世界各国で激しい議論を巻き起こしています。
税収減が引き金 道路整備財源の確保が目的
この課税導入の背景には、ガソリン車からEVへの移行に伴う税収の減少があります。従来、道路の整備や維持管理の財源は、ガソリン税や軽油引取税といった燃料課税が大きな役割を果たしてきました。しかし、電気を動力源とするEVの所有者はこれらの税金を実質的に負担していません。その結果、道路を利用する全てのドライバー間での負担の公平性が損なわれ、インフラ維持の財源そのものが危ぶまれる事態に発展しています。
「環境対策の罰則」か「公平な負担」か
EV走行課税の提案に対しては、賛否両論が噴出しています。反対派からは、「環境に優しい交通手段の選択を妨げる逆行措置だ」「政府のインセンティブ政策に矛盾する」といった批判の声が上がっています。特に初期購入者が高い環境意識を持ってEVを選択した経緯を考えると、一種の「ペナルティ」と感じるユーザーも少なくありません。
一方、支持する意見では、「道路を使用する全ての者がその維持コストを公平に分担すべきだ」という原則論が強調されます。ガソリン車ユーザーとの負担格差是正と、持続可能な道路財源の確保が、この制度の主な論拠となっています。
技術的課題と今後の展望
走行距離課税を現実的な制度として運用するには、いくつかの高いハードルが存在します。走行距離を正確かつプライバシーを侵害せずに把握する方法、州をまたぐ移動や国外からの旅行者の扱い、徴税コストなどが主な課題です。カリフォルニア州では、GPSを利用しないオドメーターの写真提出方式や、走行距離報告に応じた年次登録料の調整など、複数の案が検討されています。
EVの普及が進む今後、各国で同様の税制改正論議が活発化することは確実です。環境政策と社会インフラの維持という二つの重要課題のバランスをどう取るかが、政府や自治体に突きつけられた新たな命題と言えるでしょう。