フォードのEV戦略、新モデルでも財務改善に至らず
フォード・モーターは、電気自動車(EV)市場での存在感を強化すべく、新型モデルの投入を加速してきました。特に、欧州市場向けに開発された新型「エクスプローラー」や「カプリ」といったSUVモデルは、より広い顧客層を取り込み、EV事業の収益基盤を確立するための重要な一手と位置づけられていました。しかし、最新の決算報告は、こうした期待を裏切る厳しい現実を示しています。新モデルの投入にもかかわらず、EV部門「Model e」は依然として大幅な営業損失を計上しており、同社の財務全体に重くのしかかっている状況です。
販売台数増加と損失拡大の矛盾
興味深いのは、販売台数自体は新型モデルの効果もあって増加傾向にある点です。しかし、それが直接的な収益改善にはつながっていません。その背景には、EV市場全体における激しい価格競争や、バッテリーなどの原材料コスト高、そして大規模な製造施設や充電ネットワークへの継続的な投資が必要なことが挙げられます。フォードは市場シェアを獲得するために積極的な価格設定を余儀なくされる一方で、これらの高いコスト構造を短期間で解消することができていないのです。この「販売は伸びるが、損失も拡大する」という構図が、現在のフォードのEV事業を特徴づけています。
従来型車両の収益がEV赤字をカバー
現在のフォードの財務を支えているのは、ガソリン車やトラックなどの内燃機関(ICE)車両を扱う「Ford Blue」部門、そして商用車部門「Ford Pro」です。これらの部門が生み出す堅実な現金収益が、EV部門の大規模な投資と継続的な損失を賄う、いわば「資金の源泉」として機能しています。この構図は、多くの伝統的自動車メーカーがEV転換期に直面する典型的なジレンマを象徴しています。すなわち、将来の成長に向けた巨額投資が、現在の収益を生み出す既存事業に依存せざるを得ないという課題です。
持続可能なビジネスモデル構築への道程
フォードの経営陣は、EV事業が単独で採算が取れるようになるまでには、まだ数年を要するとの見解を示しています。今後の焦点は、第2世代EVプラットフォームの開発を通じてコスト効率を大幅に向上させ、より収益性の高い製品ラインアップを構築することにあります。また、ソフトウェアサービスや充電関連ビジネスなど、車両販売以外の収益源をいかに育てるかも重要な課題です。新モデル投入は必要なステップですが、それが財務的な成功に直結するわけではないという現実が、自動車産業のEVシフトの難しさを浮き彫りにしています。