ハイブリッドシステムの革新が生む、新しいスポーツカーの姿
新型ホンダ プレリュードの登場は、多くのファンに歓迎されました。しかし、この新型スポーツハイブリッドクーペには、従来の車両にはないユニークな特徴があります。それは、車両が完全に停車している状態では、エンジン回転数を意図的に上げることができないという点です。この挙動は、一部の自動車愛好家にとっては意外に感じられるかもしれませんが、その背景にはホンダの先進的なハイブリッド技術「e:HEV」の設計思想が深く関わっています。
変速機のないパワートレインのメカニズム
この新型プレリュードの核心は、2.0リッター直列4気筒エンジンと2つの電動モーターを組み合わせた「e:HEV」システムにあります。このシステムの最大の特徴は、従来のような多段式の変速機（トランスミッション）を備えていないことです。代わりに、固定ギア比を通じて動力を駆動輪に伝達します。エンジンは主に発電専用機として機能し、その動力で発電した電力でモーターを回転させて走行する、いわゆる「シリーズハイブリッド」に近いモードが基本となります。
停車中に回転数が上がらない技術的理由
車両が停車している時、システムは基本的にエンジンを停止させ、バッテリーの電力のみで全ての電装品を賄おうとします。仮にバッテリー残量が極端に少ないなどの特殊な状況でなければ、発電の必要がありません。したがって、停車中にアクセルペダルを踏み込んでも、駆動輪と直接的な機械的連結がないエンジンを回転させる指令はシステムから送られず、回転数は上がらないのです。これはシステムの効率性と静粛性を最優先した設計上の選択です。
スポーツ性と効率性の両立を目指して
この挙動は、かつてのプレリュードが持っていた「停車中でもエンジン音を楽しむ」ような体験とは一線を画します。しかし、それはこの車のスポーツ性が失われたことを意味するわけではありません。走行中には、システムが必要と判断すればエンジンが直接駆動輪を駆動する「パラレルハイブリッド」モードにも切り替わり、ダイレクトな加速感を提供します。新型プレリュードは、電気化時代における「スポーツカーの楽しみ方」を再定義する存在と言えるでしょう。