ECTセンサー(冷却液温度センサー):作動原理とトラブルシューティング
ECTセンサー(Engine Coolant Temperature、冷却液温度センサー)は、エンジン管理システムの重要な構成要素です。エンジンブロックやシリンダーヘッドに設置され、冷却液の温度をリアルタイムで計測します。このデータは、エンジンの性能、排出ガス、安全性を最適化するために不可欠です。
ECTセンサーの作動原理
ECTセンサーはサーミスタ、すなわち温度によって抵抗値が変化する電気抵抗体です:
- 高温時(エンジン温時)→ 抵抗値低下
- 低温時(エンジン冷時)→ 抵抗値上昇
エンジン制御モジュール(PCM/ECM)はセンサーに5ボルトの基準電圧を送信します。センサーの抵抗値変化によりPCMに返される電圧が変調され、これを基に以下を制御します:
- 空燃比の調整
- 冷却ファンの作動制御
- 排気浄化システムの制御
- アイドリング制御
測定電圧の代表例(参考値):
- エンジン冷時:0.5V未満
- エンジン温時:約4V
正確な数値は車両取扱説明書を参照
技術的特徴
- 配線:通常2線式(5V電源線と信号戻り線)
- 設置位置:冷却経路周辺(シリンダーヘッド、サーモスタット等)
ECTセンサーと温度送信器の差異
ECTセンサーはPCM/ECMへデータを送信するのに対し、温度送信器(センサー送信機)は計器パネルの温度計へ直接信号を送ります。これらは別機能の部品であり混同しないよう注意が必要です。
代表的な故障と故障コード
ECTセンサーまたはその回路の不具合は以下のような診断トラブルコード(DTC)を発生させます:
- P0115:回路不良
- P0116/P0117/P0118:測定値が許容範囲外(過小/過大)
- P0119:信号不安定
- P0125~P0128:暖機不良または校正誤差
これらの不具合が引き起こす現象:
- 過給油または燃料不足
- 冷却ファンの誤作動
- 有害排出ガスの増加
重要事項
- サーミスタの検査には回路計またはマルチメーターを使用推奨
- 交換時は冷却液の部分排水が必要な場合が多い
- 常に車種適合品を選択すること
正確な診断には、メーカー指定の手順と規定値に従って作業を実施してください。